日の本に 生まれ出でにし益人は

神より出でて 神に入るなり

中西直方


神葬祭とは

「神道(しんとう)」とは、私たちが古来から大切にしてきた人生観や自然観など“日本人のこころ”そのもので、「敬神(けいしん=神様を敬うこと)」と「崇祖(すうそ=ご先祖さまを崇めること)」の二本柱から成り立っています。その神道の精神性をベースに、「国礼・国式」といわれる日本固有の礼法によって執り行われる神道式のお葬式が「神葬祭(しんそうさい)」です。

 

日本人の人生儀礼と神葬祭

日本人は、「人は神様の中から生まれて、死後は神様の元に帰って行く」と考えます。生まれてすぐの初宮詣に始まり、七五三祝・成人祝と神様によって成長を見守られ、更には結婚式、厄除けと「人生儀礼」を重ねて行きます。老境に入って行われる喜寿・傘寿・米寿等の「賀の祝い」も神様への感謝の祈り。やがて「現世(うつしよ)」での生涯を終えた人は、生前と同じように神様に護られて、やがて、子供や孫たちをしあわせに導く“ご先祖さま”の列に加わって行きます。神様の御加護の下で、現世を離れ幽世(かくりよ)に旅立つための儀礼が「神葬祭」です。

 

神葬祭の歴史

日本固有の葬送儀礼である神葬祭は、「古事記」や「日本書紀」などの“神代(かみよ)の物語り”にその始まりを求める事が出来ます。永い歴史と伝統を積み重ね、現代でも、皇室の御葬儀が神葬祭によって執り行われる事はよく知られています。一方で、神葬祭を代々家の儀礼として伝えているご家庭はそう多くありません。それは、江戸時代の「寺請け制度」の下で、一般の人々は仏式以外の葬儀を許されていなかった事も影響しています。

今は、誰でも自由に葬儀の形を決める事が出来る時代です。元々神葬祭を守って来た家でなくとも、清楚で明るい儀礼の姿や、簡素な斎場の設えに感銘を受け、神葬祭を希望する方も年々増えて来ています。


神葬祭の特徴

□故人とご家族の「思い」に寄り添って儀礼を行います

神葬祭では、故人の「おみたま」に“ご存生同様”にご奉仕します。

□清らかで折り目正しい儀礼でご参列戴く皆様にも感銘を与えます

生前のお人柄や履歴を分かり易い「やまとことば」の祭詞で奏上します。

□華美を排し清楚な設えを基本とします

ご家族の希望と斎場などの施設の環境に応じて清々しい設えを調えます。

□多額な費用は必要ありません

生前のお名前に「おみたま」としての敬称を付す霊号に特別な費用は要りません。また、葬祭奉仕料の他に神社に対する別段の寄附等も必要ありません。


神葬祭の構成

○通夜祭

故人のたましいが再び戻ることを希望して夜を明かした、古代の「もがり」の名残と考えられています。

通夜祭ののちに、ご遺体から故人の「みたま」を「霊璽(れいじ)」に遷す「遷霊(せんれい)」を行います。

○葬場(そうじょう)祭

告別祭とも称し、縁ある皆様のご参列を得て故人とのお別れの儀礼を行います。

葬場祭ののちに「発柩(はっきゅう)」の儀礼を行ない、ご遺体を火葬に送り出します。

○火葬祭

親しい身内の皆様により最期のお別れを行い、ご遺体を浄火によって火葬に付します

○帰家祭

家の隅々をお祓いし、清らかに整ったご自宅の祭壇に故人「みたま」をお迎えします。没後10日の節目である「十日祭」を同時に行います。

○五十日祭

没後50日の節目に祭事を奉仕し、「みたま」が少しづつ“ご先祖さま”の列に近づけるように祈ります。五十日祭を済ませ、同日中に「納骨祭」を行うことが一般的です。


神葬祭Q&A

  Q:仏式の「戒名」のようなものはありますか?

A:神道では基本的に生前の氏名がそのまま「おみたま」のお名前になります。

氏名の後に享年に応じて男性には「命(みこと)」「大人命(うしのみこと)」、女性には「姫命(ひめのみこと)」「刀自命(とじのみこと)」などの敬称を付し霊号(れいごう)とします。尚、霊号に対する特別の費用は要りません。

 

 Q:神葬祭でのお参り仕方はどのようにするのでしょうか?

A:神社における参拝と同じように「玉串(たまぐし)」を捧げて「二礼・二拍手・一礼」の作法でお参りします。

・玉串の根元をご霊前に向けてお机の上に供え

・二度深くお辞儀をし

・二度手を打ち合わせ(ただし、音を立てないようにします)祈念を込め

・もう一度深くお辞儀をします

 

 Q:仏式の「位牌」のようなしるしはありますか?

A:「霊璽(れいじ)」と云うおしるしに「おみたま」を遷してお祀りします。

霊璽は白木で作られ、表に「大人命」や「刀自命」等の敬称を付した「おみたま」のお名前を記し、裏面には亡くなられた年月日と享年を記すのが一般的です。

本牧神社では、ご希望に応じて故人の御遺品や縁の品をお清めし、これに「おみたま」を遷して「霊璽」とするご相談にも応じています。


「おみたま」に寄り添って

前の頁に記した構成は、伝統的な神葬祭の「標準」です。今は、ご家族の構成や生活習慣、住環境の変化、或いはコロナ禍の影響などもあり、必ずしも標準的な儀礼を行なえない場合もあります。

大切なのは、ご遺族やお参りされる皆様が故人の「おみたま」に寄り添い、静かに在りし日を偲ぶやさしいお気持ちになれること。そのために、本牧神社ではご希望に応じて、柔軟に儀礼の形を工夫してご奉仕致します。

例えば…

□葬儀の全てをご家族だけで行ない、故人を静かに見送りたい。

□お通夜は身内だけでゆっくりと語り合い、告別式で皆さまに見送って戴きたい。

□お通夜をしっかりと行ない、告別や火葬は出来るだけシンプルに行いたい。

□身内もご参列も殆どいないので、火葬を中心に質素に行いたい。

□心身の疲れが厳しいので葬儀の全てを一日で行ないたい。

など、「こうでなければいけない」と云うイメージに縛られずに、心静かに温かく、故人との最期のひと時を悔いなく過ごすために何が必要なのか・何が出来るのかを、先ずはお考えください。

その他分からないこと、ご不安なことなど何でもご相談ください。